伴名練『なめらかな世界と、その敵』(早川書房)を読んだ。
短・中編が6作入ったSF集。この人とは趣味が合うなぁと一方的に信頼しているブログの主が、「びっくりするほど面白かった」と評していたのがきっかけ。
作者の名前も作風もあらすじも知らないまま読んだのだけど、始めの数ページで完全に引き込まれ、読んでいる途中ずっと「びっくりするほど面白い!!」と感じていた。一編目の冒頭、「これは誤植なのか?」という表現が続き、いったい何が起こっているのかわからない。説明もない。わからないまま読み進めるうちに、なるほどこの世界はこういう設定なのねと徐々に輪郭がつかめてくる。この説明のされなさ、読者が置いてけぼりな感じ、そこからだんだんと背景や状況が見えてくるところに緊張やスリルやワクワク感がある。ストーリー展開も二転三転、表だと思っていたら裏だったというような驚きがあって先が読めない。6編全部がそんな調子。しかもそれぞれ時代も構成も文体も異なる物語としておさめられており、作者のアイディアや創作の下地というのはどれだけ深くて広いのか。
設定や想像力にびっくりするだけでなく、登場人物たちに対する愛おしさや切ない気持ちもかきたてられた。どれも本当に面白かったけれど、なかでも好きだったのが「ひかりより速く、ゆるやかに」。時間の流れが異常化するという事態に巻き込まれた新幹線をめぐる物語で、設定も構成も想像のはるか上だった。ページをめくるのにこんな夢中になったのはいつぶり?ってくらい。
▼「ひかりより速く、ゆるやかに」冒頭1万5千字が読めます(早川書房提供)
https://www.hayakawabooks.com/n/n0cfa8c1132ce
SFって何でもありだし自由なんだなー。今まであまり手にとってこなかったけど、もっと知りたくなった。しかし範囲が広すぎてどこから手を付けたらいいのかわからない。タイムトラベルものが好きなので、まずはそこからか。
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