森絵都さんの『カザアナ』を読んだ。
舞台は近未来の日本、観光戦略の一環として過剰な〈古き良き日本らしさ〉が求められる社会。人々は常に監視され、言動のいちいちに点数が付けられて評価されている。なんて末恐ろしいディストピアな設定……と思ったけど、考えてみたらすでに現実世界もそんな感じかもな。
そんな窮屈な世界に暮らすある姉弟のもとに、自然界と特別に心を通わせることのできる特殊能力をもった人物たち、「風穴」が現れる。実は彼らは平安末期から伝わる異能の一族の末裔で、この姉弟+母と力を合わせて窮屈な世界を打破しようとする、というお話。
姉弟や母の、破茶滅茶なまっすぐさや行動力が痛快。特に母さんのキャラ、最強の女だな。前半はほろりとするエピソードもありおもしろく読んだ。が、後半の設定や展開は破茶滅茶がすぎるというか、要素を詰め込みすぎというか、ちょっとしらけてしまう印象もあった。地下組織の中枢に潜入するとか、来日中の米大統領と縁側でじゃれあって遊ぶとか、造園業者にまぎれて首相官邸に入り込むとか。ドタバタしすぎて、全体の読後感としてはなんだか軽いノリになっちゃったなーという。
でも、破茶滅茶ファミリーの前向きさと強さ、風穴たちのしなやかさとたくましさに、なにか元気をもらえた感じはある。あと、悪がこらしめられるシーンで誰も死なないのがほっとするわ。(前後して読んでいた伊坂幸太郎とか十二国記では簡単に死ぬ)
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