旅と日常のあいだ

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祝「山の日」制定。山の切手に、特別な消印を。

今年2016年から、8月11日は「山の日」の祝日。

登山好きとしてはもちろん楽しみにしていた。その日は山に登る予定はなく、それどころか船に乗って海に出て、離島へ行ったのだがまあそれはそれとして。

楽しみにしていた理由のひとつが、山の日記念の切手が出ることと、それを記念した限定消印が出ること! 地味だけど、ものすごく地味だけど、ものすごく楽しみだったのだ。

山の日は8月11日だが、記念切手の発売は前日の10日。なぜなら郵便局というものは祝日に切手を発行しないから。その日私は旅の途中で名古屋におり、柳橋郵便局に向かっていた。名古屋駅から徒歩8分ほどのこの郵便局で特印がおされるからである。特印というのは新切手発行を記念して作られる特別な消印のこと。これまでに静岡の郵便局でも何度かおしているけれど、大都市名古屋はわけが違う。消印をおすのは郵便局の窓口ではなく、別棟の専用会場なのだ。専用の会場……そんなものを用意するほど消印をおしたがる人口が多いのか? 通常業務に支障をきたすほどの大人数が押し寄せるのか?

まずは柳橋局の窓口に行き、発売ほやほやの山の日切手を購入。別に、これを買うことが消印ゲットの条件というわけではない。手持ちのどんな切手にだって、山の日記念の特印をおしてくれる。おしてくれるけど、やはりここは山および山の日に敬意を表したい気分なのだよね。

会場の場所を尋ねると、郵便局の隣のビルだとのこと。おそるおそる行ってみた。行ったことないのだもの、平日の朝に、切手の消印をおすための専用会場になど!

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「初日印押印会場」の看板があって、郵便マークの書かれたカーテン(のれん?)がかかっていた。この薄いカーテン、必要か? 中で何が行われているのか、見えるようで見えないようで結局見えているこのカーテンの、存在意義はいったい何。

室内には長机が並んでおり、先客が10人くらいいた。机でハガキを書く人、消印集めのためのノートやカードを整理する人、これまでに集めたものを見せ合う人。若者は皆無、どう見ても私が圧倒的最年少であった。あとはそうね、50代以上の、おおむね男性ね。みな穏やかそうな表情っていうか、文化的な香りがするっていうか。私の思い込みだけど、あながち間違ってないんじゃないか。荒っぽくてガサツな切手愛好家なんて考えられん。

ここでおしてもらえる消印は2種類、槍ヶ岳と、富士山。買ったばかりの槍ヶ岳切手には槍ヶ岳の消印を(当然よ)、そのつもりで持参していた富士山切手には富士山を。

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なにこのカッコよさ。しびれる。見ても見ても飽きない。槍ヶ岳のほう(上の消印)は機械押印というもの。人が手でゴム印をおすのではなく、台に置いた紙の上に機械がおりてきてポンと自動ではんこをおすのであった。いやあすごいね、図案が細かい。アミ点による描写の精巧さを見よ! インクの付け方、力のかかり具合が均等で美しい。文句を付けようのない一打である。

しかし何だろう、完璧すぎて面白みがないというか、「うまくおせないんじゃないか」というスリルが足りないというか(いらんけど)。消印としては完璧だが、そこに物語性が存在する余地がないのがつまらないなあと思った。まあ難しいところよね。人間の手押しであり得ないほど下手くそだったら(このときだ。倉敷郵便局め…)、「これもひとつの物語よのう~」などと思える心の広さはないわけで。

いずれにせよ、山の切手と消印がかっこよすぎるっていう話。ああ、消印のためならどこまでも。