旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


パリ旅2 バスの窓は割れ、シャワーのお湯はとまる

旅の1日目、関西国際空港からパリへ。前回の記事はこちら

 お昼前に関空からエールフランス便に乗り込んで一路パリへ。空港にて最後に買ったものは、ロイズのラムレーズンチョコレートであった。向こうで上手に買い物ができなくて、どうしてもお腹がすいたときのためのお守りとして。

旅の荷物は超コンパクト、私もMちゃんも預けることはせず、機内持ち込みできるトランクひとつで出発だ。機内ではシャンパンを飲み赤ワインを飲み、二度の食事のほかにアイスバー、クッキー、クラッカー、もみじまんじゅう(エールフランスのセレクトが不思議)などを食べた。食べ過ぎ。

映画も3本観た。「シンデレラ」「王妃の館」「繕い裁つ人」。なんだかどれもイマイチだった。帰りはもっと、愛と裏切りと正義!みたいな派手でわかりやすいのを観ようと思った。(そして実際にそうした)

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離陸直後に流れる「機内の注意」の映像がかわいすぎ。ボーダーTシャツで踊る5人のフレンチスタイルなお姉さんたち

12時間後にパリ・シャルルドゴール空港に到着。市街地(オペラ)に向かうロワシーバスがなかなか来ず、思いのほか冷たいパリの空気を感じながら列に並ぶ。9月末のパリは結構寒い。寒さ対策はしてきたが、準備が足りているのかやや不安。その不安のとおり、数日後に私は風邪で寝込むことになるのだが、それはまた先の話。

今日はアパートの滞在手続きをするため、どこにも寄らずにアパートに直行だ。まずはバスでオペラまで、そこからメトロに乗って最寄駅まで。頭の中にルートを描いて完璧にシミュレーションしていたのに、それは無駄になった。なぜならば、バスがオペラまで行かなかったから。私たちが乗り間違えたわけではない。オペラ行きのバスなのにオペラにたどりつかないのは、緊急事態が発生したからである。

バスが出発してしばらく経った頃、突然、ごく近い距離から「バラバラバラバラ」という大音量が聞こえたのである。何事かと反射的に振り返ると、車窓のガラスが割れていた。 走行中の! バスの! 窓が! 割れている!!

私たちの席から通路をはさんだ場所で一面のガラスにヒビが入り、一部は砕けてあたりに散乱、残った窓は継続的にミシミシと音を立てている。もういろいろ怖い。ケガをしそうで怖いし、原因がわからなくて怖い。窓の劣化? 何かが外からぶつかった? 攻撃でも受けたのか? そして何より、説明も調査もないままバスが平然と走り続けているのが怖い。走る間にも窓がバリバリミシミシいってるよ~、破片がその辺に散らかってるよ~! やっと停車したと思ったら、目的地の手前で強制的に降ろされた。それはいいけど代替バスが来るわけでも返金があるわけでもない。路上にポツンと降ろされて、一番の問題は、「ここはどこ?」ってことである。

オロオロしながらも気を確かに持ち(こういうとき一人旅だったら大変だ)、ひとまずメトロの入口を見つけて自分たちの居場所を確認、目指す駅まで粛々と地下鉄に乗った。途中、アパートで待ちあわせている管理人に電話をかけた。予定よりも到着が遅れます、なぜなら乗車したバスの窓が割れて途中下車することになったからです。「バスの窓が割れて」という事件性&緊急性じゅうぶんなエピソードなのに、電話の向こうの管理人は驚く様子も心配する様子もなし。フランスではバスの窓が割れるなんて日常なのかい、そんなはずはないよね? 駅からアパートまで、日が落ちたあとの知らない道を心細く歩き、アパートに着いたのは21時前だった。やれやれ。

管理人と会って部屋の鍵を受け取り、もろもろの注意事項を聞く。シャワーのお湯には限りがあります、ゴミ捨て場は1階です、部屋の電話は無料でかけ放題です、ほか。ともかく、これでめでたくパリ住まいとなった私とMちゃん。さっそく近くのスーパーへ買い出しに。ひとまずは水とオレンジジュースと、歯磨き粉を買った。

部屋が寒いのでオイルヒーター全開。そして、注意されていたにも関わらずシャワーの途中でお湯が出なくなった。こんなに早く残量が尽きるとは想定外、シャンプーは何とか済ませたけれど今夜はリンスなしである。しかも、部屋にはドライヤーがない。2000円のレンタル料をケチった自分のせいである。パリは乾燥してるから髪なんてすぐ乾くよ、ドライヤーなんて使わないよ!って言ってた数か月前の自分が恨めしい。ちっとも乾かない髪をタオルで巻き、深夜12時ごろベッドに横になる。

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部屋から見下ろす風景。

我らのアパートはにぎやかな円形広場に面しており、ここにはカフェやらバーやらが並んでいて遅い時間まで営業中。5階の私たちの部屋にも、まだまだ騒がしい声が聞こえてくるのであった。明日は休日じゃないよ、木曜日だよ。なんでみんな帰らないの、仕事じゃないの? うるさいわ髪は濡れてるわ時差ボケだわこれじゃ眠れやしない……ということはまったくなくいつの間にか眠りに落ち、パリの夜は更けていくのでした。