旅と日常のあいだ

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はしたない格好ですみません、汗と熱の遠州さんざん詣で

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法多山尊永寺」。おいしい厄除団子が名物。

 

静岡県袋井市にある3つのお寺、通称「遠州三山」をまわる必要があって、まわってきた。という話を人にしたら「どうしたの、なにかに取り憑かれてるの? 悪霊祓い?」と聞かれたが違う。れっきとした仕事だ。お参りをして御朱印をいただくという仕事。「そんな仕事あるの?」とますます不思議がられたが、とにかく遠州三山である。仕事である。

遠州三山は法多山尊永寺 、萬松山可睡斎 、 医王山油山寺 の3つ。どれも郊外(っていうか山)にありアクセスしづらい。自家用車ならば何の問題もないが、車を持たない私が一人で行く場合の選択肢は公共交通機関、そして脚力だけが頼りである。

尊永寺は駅からバスで往復するとして、可睡斎と油山寺の間にはバスがない。3キロちょい、まあ歩けばいいか。油山寺から最寄り駅まで、これまた交通手段がない。4キロちょい、これも歩けばいいか。登山靴で寺から寺へのウォーキング。歩行距離は合計10キロ以上、こうなると果たして仕事なのか趣味なのか修業なのか謎である。

誤算だったのは気温だ。この日は暑かった。11月中旬にしては高い25度の晴天、強めの陽射しの下をごつい登山靴でせっせと歩けばそりゃ暑い。朝が寒かったためヒートテックにウールのセーター、キルトの裏地付きコートにこれまたウールのストールという一式。ウールいらんかった。坂道をのぼり茶畑の間をひたすら進むうち、暑くて汗が止まらいわ喉は乾くわ頭がぼんやりとしてくるわ、前に熱中症になったときのような気持ち悪さに襲われる。

ウールのストールをバッグにしまい、コートの裏地も取り外す。しかしまだ暑い。コートを脱いで手に持ってみるが暑さは解消されない。諸悪の根源はセーターだ。あったかすぎるウール100%のせい。これを着ている限り暑さから逃れられない。このままでは、お参りを果たす前に山道で行き倒れてしまう…。

もうセーターを脱ぐしかない。セーターの下は長袖のヒートテック、薄くてピッタリしたこれはおしゃれシャツでも何でもなくどこからどう見ても「下着」である。ていうか「肌着」。お恥ずかしくも肌色だし。人前に出られる姿ではないが上にコートを着ていればバレないだろう。まあアレだ、下着の上にすぐコートって何やら変態的な香りがするけど、致し方あるまい。

セーターを脱いで暑さから解放され、三山をまわり終えた。下着姿でのお参りで、神仏の皆々様にはご無礼ご容赦ください。今度は駅に向かってぐいぐい歩く。残りあと2キロというところでクラクションがプッと鳴り、前方から近づいてきた車が私の横に停まった。えっ、なに。怖いんだけど。見渡す限り、ほかに歩行者の姿がない場所である。

助手席の窓が開いて感じのいい老夫婦が顔を出し、「道を教えてくださる?」と尋ねられた。近くの観光名所の名前を告げられたが、彼らが向かっていたのはまるっきり逆の方向であった。あっちですよと教えながら、心の中で(それ、私の目的地の方向!)と叫ぶ。夫婦はお礼を言って大きくUターン、私は私で再び歩き始めたのだが、今度は後ろからクラクションが鳴って再び呼び止められ、「同じ方向なら途中までお送りしますよ」と言ってくれるではないか。

おお、神様、仏様! これが遠州三山をお参りしたご利益か!! 暑さの中を歩き続けていい加減イヤになっていた私、この老夫婦が極悪な人さらいかもしれないなどいう危険性は1ミリも抱くことなく、ありがたく乗せてもらうことにした。「道案内します~」とかなんとか言いながら。

後部座席に乗るとき、コートを脱ごうとしてハッと思いとどまった。いかん、コートの下はピタピタの肌色インナー1枚、とてもお見せできるような姿ではないのだった。

そんなわけで、「いやあ、今日は夏みたいに暑いですよねえ」って言いながらもコートを着て前のボタンをびっちり留めて、足元はがっちり登山靴っていう謎の格好。暑いなら脱げば?と思われていただろうがそうはいかない、まったく、お参りも楽じゃないね。(この3日後に熱を出して寝込みました。汗が冷えて風邪を引いたのか、破廉恥な格好でお参りしたことへの戒めか)