4年ほど前に雑誌で存在を知ってずっと気になっていた喫茶店「三愛(さんあい)」。創業1965年(つまり50年前)、愛知県豊橋市にある「珈琲とホットケーキの店」なのだが、なにが気になるって、紹介されていたホットケーキの独創性。メニュー名は「レモンスープホットケーキ」で、これまでに見たことのないスタイル、思いつきもしない概念を体現していたのだった。
先日ついに三愛を訪問した。店構えは超レトロ、案内された席は2階建てのうち1階窓辺のテーブルで目の前を通る路面電車が見える豊橋ならではのロケーション。マスターのエプロンは黄色と緑のストライプで、壁には「本日のコーヒー抽出責任者」としておそらくマスターのものであろう氏名が書かれていた。
栗好きの私はマロンクリームのホットケーキを、一緒に行った相手は「レモンスープホットケーキ」を注文。ドリンクの注文も必須なのでコーヒーを頼む。コーヒーだけでメニュー表が6ページくらいあった。強さや酸味や淡白さを軸にして、何十種類ものブレンドが細かく説明されていた。私は「砂糖もミルクも入れずに飲みたい人向け」みたいな12番、相手は「まろやかな貴婦人のよう」(だったか?)の8番。紅茶やココアもあったのでコーヒーが苦手な人もだいじょうぶ。
数分後、店内にたちこめるレモンの香り。そして運ばれてきたレモンスープホットケーキ(750円)。
これこれ、このビジュアル! ホットケーキが、スープに完全にひたっている!
レモンスープは割としっかり酸味がある。シロップの小瓶が付いているので好みで甘さを足せるのだが、食べているうちにホットケーキがスープを吸って、2枚重ねのうちの下のケーキはなかなかパンチのある酸っぱさに。最終的にはお皿の水分がゼロになった。しかしこれがクセになる美味しさで、何だろうねこれ?何だろうこの美味しさは?って言いながらパクパク。
一方、私が頼んだマロンクリームシャンティホットケーキ(810円)。おおお、なんということだ、この高さ、このタワー、この立体感!カットしたホットケーキの飾りつけもお見事。ホットケーキはパリッと焼かれていて超好み。そう、ふわふわでもシュワシュワでもなく、表面の焼き具合はパリッと系なのである。パリッとしていい香り、最高だ。ただしレモンスープではそのパリッと感が体験できないので要注意。
ホットケーキの種類もたくさんあった。レアチーズとか、あんことか、オレンジソースとか。どんな盛り付けでやって来るのか、それだけでも興味がある(店内にもメニュー表にも写真は一切ないので想像するしかないのである)。なにしろホットケーキ本体が美味しかったので、次に行ったらプレーンを食べようかな。夢が広がる。
不動の第一位であるつきさむのホットケーキが食べられない今(お店はただいま夏休み中)、ホットケーキ熱を満たしてくれるのは三愛かもしれない。静岡市からだと遠いのが難点だけどね。