知人から「きっと気に入ると思うよ」と教えてもらったあと、行く機会をつくれないままに半年ほどが過ぎてしまった店がある。静岡市にあるカフェ、「つきさむ」である。
行った人の話をブログで見つけて読むたび、想像と憧れがふくらむばかり。内装といいメニューといい雰囲気といいたいへんに素敵な印象で、何を頼もうかとか何の本を持って行こうかと思いをめぐらせていた。そして、ある晴れた土曜の昼下がりについに初訪問(ちなみに、スマートフォンのGoogle mapを頼りに出かけたところ、至近距離にあるまったくの別店舗「月さむ」と間違えた。みんなも注意)。
カウンターが6席くらい、テーブルは確か3つ。どこに座っても店内が見渡せるくらいの広さ。私がお店に入ったとき、カウンターとテーブルに先客が1組ずつあった。
おやつの時間であったので、コーヒーとケーキを頼む。コーヒーの名前は、「アルプスブレンド」。うわあぁぁ、グッとくる。甘いものは、3種類の「本日のケーキ」から一つを選ぶ。「ガトーショコラ」も「チーズケーキ」も魅力的だけれど、選んだのは「柚子と黒こしょうのシフォンケーキ」。
ホイップがこんなについてきてうれしい。ケーキにかかったアイシングも。
本棚があって、店主の趣味なんだろうなという本がたくさん並んでいる。このセレクトがツボすぎた。主には、旅と登山。なんて素敵なんだろう!読みたいものがたくさんあった。持っている本もそうでない本も。この中から『山と山小屋』(小林百合子、野川かさね)を抜き出してもくもくと読んだ。アルプスブレンドを飲みながら。それはもう、がぜん山に行きたくなった。昨年10月の北アルプス以来山に登っていないけれど、これまでに見た景色やしんどかったことや気持ちよかったことを思い出して、ああまた早く次の山へ行きたいなあと強く思った。
このカフェ「つきさむ」は、夏の間は数か月にわたって休業する。店主が山に登って、山小屋に長く滞在するためである。登山シーズンになって店が閉まってしまう前に、もっとほかのケーキも食べたいしほかの本も読みたいし、サンドイッチやランチも食べたいなあ。
木の机も木の椅子も、白い壁も、カウンターの外と中を隔てる目隠しの壁が高く造られているためにお客と店主の目が合いそうで合わないところも、本棚の中みも、とてもいいと思った。また行こう。山好きな人と一緒に来たらきっといいだろうな!