槍ヶ岳~前穂高縦走記録の5回目、「北穂高~奥穂高」編。前回の記事はこちら
北穂高小屋から北穂高岳山頂まではわずか1分ほど。さくさく歩いて、今回5つ目となる3000メートル級の山頂を踏破。
(本ブログでは、山頂ではリカちゃんが登場することになっています。しばしお付き合いください)
ここから奥穂高までの道のり、非常につらかった。というか、なめていた。私の頭の中はここまでの「大キレット」でいっぱいで、その先のルートについてはおまけみたいに考えていた。キレットさえ越えられれば、その先は勢いで行けるでしょ、みたいな。コースタイムは2時間30分ということで、うまくいけば2時間ちょっとで行けちゃうんじゃない?みたいな。
しかしそんなことはまったくなく、登りも下降も急だし、危ないし、疲労はたまるし、今になって眠くなるし。あとでガイドブックを見たら、この北穂~奥穂間は「気が抜けない難路。国内有数の困難な岩稜縦走路のひとつ」と書かれていた。ハイ、確かに。そりゃしんどいはずだわ。
岩場を下る。真ん中の黄緑は私の背中。
足場がすべすべで恐ろしい。よろよろ。腰が引けてますな。
垂直のハシゴをせっせと登る。
クサリを頼りに、せまい道をたどる。ふらふら~。
いつになったらゴールにつくのやら……
途中、これまでの歩行時間からいって半分くらいきたかな?と思って地図を見たらまだ全体の四分の一くらいしか進んでいなくて、あのときは心底打ちのめされた。ガビーンってなった。
考えてみれば昨日も10時間ほど歩いて槍ヶ岳に登ってきたわけで。今朝も早起きしてずっと歩いているわけで。脚も上がらなくなるし、ペースも上がらなくなるよなあ。コースタイムは2時間30分とあるが、この調子では3時間30分ほどかかりそう。まさかまさか、こんな稜線上で日没を迎えるなんてことになったらピンチである。なんとしても明るいうちにたどりつかねば!とちょっと焦り始める。
奥穂高までの稜線上にあるもう一つのピークは涸沢(からさわ)岳、標高3,110m。雲が多くなってきて、何やらものものしい雰囲気になっております
そして、ここ涸沢岳からは眼下に赤い屋根が見えた。目指すべき奥穂高山荘!やったー、やっとゴールをとらえたーーー!!! スキップしたい気分である。
奥穂高山荘に着いたのは16時40分であった。コースタイムを70分オーバーしての到着。いやあ、時間がかかった。大キレットへの入口で声をかけあった70歳の夫婦は先に到着しており、談話室でくつろいでいた。すでにお酒を飲んで良い気分になっている模様。こちらに気づいて手を振ってくれた。ご夫婦とも小柄だけれど体力がある。こちらは(なけなしの)若さだけが取り柄なのに、体力のもちが全然違うなー。
夜ご飯がおいしい!鮭!コロッケ! お味噌汁とごはんはおかわり自由
消灯は20時、泊まった部屋には定員ぴったりの10名がいた。私の寝床は2段ベッドの上段、屋根裏のため天井が低くて狭い。だからなのか何なのか、昨日の槍ヶ岳山荘と比べるとまったく寝付けなかった。やっと眠ったかと思えば深夜に誰かの声で目が覚めた。会社員が営業先であいさつしているような内容で、まさかこんな時間に電話?と思ったが、どうやら寝言であったようだ。あんなに明瞭で長文の寝言がこの世にあるなんて。本人は知らないのであろうか。