昨年、北アルプスの奥穂高山頂に立ち(夏山2012 北アルプス、奥穂高(1) - 旅と日常のあいだ)、その後槍ヶ岳山頂に立った(2012秋 北アルプス、槍ヶ岳登山(1) - 旅と日常のあいだ)私が次なる目標としたのが「その二つの山を結ぶ稜線を歩くこと」。その間には「大キレット」と呼ばれる難所があり、ガイドブックなどによると「国内の縦走路では屈指の難路、初心者が踏み入ってはならない」とある。
いつかは歩きたい憧れルートであるとともに、少々の覚悟も必要となるルート。足場の小さな岩の道、両サイドは深く切れ落ちた絶壁。恐ろしい要素が満載であり、「行きたい、でも怖い、しかし行きたい」とそれなりに悩んだ挙句、これまでの経験と体力からみて天候条件が悪くなければ行けるであろう、少しでも天候と体調に不安があれば迷わず退却すべしという慎重な判断をし、二泊三日での縦走計画が決行されたのであった。
//////////////////////////////////////////
【槍ヶ岳~大キレット~前穂高岳縦走】
2013年9月29日(日)、30日(月)、10月1日(火) ずっと晴れ
◆1日目=上高地5:30-6:15明神-7:00徳沢7:40-8:40横尾-9:30一ノ俣-10:10槍沢ロッジ10:35-11:40水俣乗越分岐-12:50天狗原分岐-15:40槍ヶ岳山荘(泊)
◆2日目=4:30起床、5:35日の出、槍ヶ岳山荘出発6:00-6:20大喰岳-7:00中岳-8:10南岳-8:30南岳小屋8:45-12:15北穂高岳13:00-16:15涸沢岳-16:40穂高岳山荘(泊)
◆3日目=4:30起床、穂高岳山荘出発5:40-6:20奥穂高岳6:45-8:35前穂高岳(紀美子平)9:30-11:30岳沢小屋12:15-14:00上高地
//////////////////////////////////////////
写真中央の稜線、これが噂の大キレット。まあ見てよ、両側に切れ落ちる崖っぷりを!
【今回のルートの見どころ】
・三日間の歩行距離50km以上
・ルート上にある3000m以上の山8つを縦走する
・難所ルートである「大キレット」踏破
【裏目標】
・史上初!リカちゃんが大キレットに挑戦(史上初かどうか知らんけど)
* * * * * * * *
一日目、まず目指すは槍ヶ岳。昨年と同じ、上高地~槍沢~山荘というルート。昨年は途中で一泊して二日がかりでの登頂だったが今年は違う。山頂まで一日で一気に登る計画である。
体力はおそらく問題ないが、日没の早いこの時期、到着時間が遅くなることだけが不安。というわけで出発時刻を昨年より大幅に早める作戦。マイカーが入れる終着地点の沢渡(さわんど)で車中泊をし、超早起きをして始発のシャトルバスより先にタクシーに乗って上高地入り。睡眠はわずか3時間、しかも寒すぎてうまく寝つけず。この睡眠不足により、のちほど大いに気分が悪くなることに。
おなじみの上高地、河童橋。夜明け前にここにいるのは登山者ぐらい。奥に見える稜線が、三日目に歩くことになる道。ほんとに行けるのかな。
まずは横尾まで、アップダウンの少ない3時間の道。とりあえず寒い。フリースを含め長袖3枚、首にはマフラーをまきまき。川沿いをいい気分で歩く……といきたいところだが、このとき体調は絶不調。とにかく超絶に眠すぎて意識もうろう、立ったままウトウトし、歩きながら夢まで見る始末。
歩くペースがまったく上がらずのろのろと進む。胸のあたりがむかむかとして辛く、同行者に「倒れ込んで眠ってしまいたい」と言ったところ「草むらで寝てていいよ、帰りはこの道を通らないから拾えないけど」と返される。悔しいので頑張って歩きましたとも!
徳沢のキャンプ場は朝もやの中
今回も彼女が一緒です
あまりにも眠いので、この徳沢の芝生広場に転がって20分ほど寝た。その後、朝の光を浴びたら気持ちがすっきりし、急に元気が出て歩けるようになった。小一時間歩いて、横尾に到着。
横尾。今日も快晴。昨年からずっと、山の天気はいつも満点
槍沢までは沢沿いの道。木陰は気持ちがよい(でも日なたの方が多い)
槍沢ロッジに着いたのは10時10分。昨年は13時30分だったので実にいいペースである。昨年はここで一泊して翌日に備えたが、今日はノンストップで山頂へ。一度来たルートはどこがキツイかわかっているので時間や体力の配分がしやすい。まあ、配分したところで疲労感が減るわけでもなし、キツイことに変わりはないんだけど覚悟ができるっていうか。
水俣乗越の分岐点で小休止。おやつに持っていった「シャインマスカット」これが大ヒットだった。皮まで食べられるタネなしマスカット、甘さとみずみずしさが何よりのごちそうで、しかもゴミが出ないっていうのが素晴らしい。たくさん持っていったのに、初日で食べつくしてしまったよ。
紅葉にはまだ少し早くて、色づいている木々はあまり見えず。
水の湧いているところでは、コップに汲んでゴクゴクと飲む。すっきり冷えたアルプスの天然水!めちゃくちゃ美味しい。
この日は晴天すぎて日差しが強く、暑さに体力を奪われた。寒かったのは早朝だけ、すぐに暑くなって半袖になり、汗をふきながらの山行となった。すれちがう登山客のあいさつも「晴れてよかったね!」と「今日は暑いね!」が多かったな。9月も終わりだというのにね。
暑さと急登を越え、ようやく槍ヶ岳の姿をとらえたところで、次回へ続く。
▼続きはこちら