まだまだ続く英仏旅行記、パリ散策の続き。前回の記事はこちら
ラデュレでお昼を食べた後は、ガイドブックを見て「ここに行く!」と決めていたお店「ル・ボヌール・デ・ダム」へ向かう。何の店かというと、刺繍の専門店である。
絢爛豪華なオペラ座の前を通り過ぎて(写真を撮る観光客でいっぱい)
目的地はここ、「パサージュ・ヴェルドー」
パサージュというのはガラス屋根に覆われたアーケード街のことで、19世紀に多くつくられたもの。晴れた日には光が差し込み、雨の日は濡れることなく買い物が楽しめる。パリの街にはいくつかのパサージュがあり、それぞれアーチの装飾や床のタイルのデザインが違っていたり、入っているお店に個性があったりして、ウィンドウを覗きながら歩きまわるのはちょっとした宝探しのような感じだ。
「パッサージュ・ヴェルドー」は古書や古版画の専門店が多い通り 「このアーケードの裏で、それぞれのお店は実はつながっているんだよ」と友人N。
そして、おめあての店「ル・ボヌール・デ・ダム」を発見。刺繍の専門店で、特に、クロスステッチのキットがたくさん置いてあるということなのだが、それはもう店の外からでもよくわかった。
壁一面、クロスステッチのサンプルでいっぱい。手芸好きにはパラダイス!
クロスステッチ(生地の目に沿って、×の形に刺繍糸を刺していく)にハマりまくっている母へのおみやげにしようと、店オリジナルのキットやパリの風景のものを探す。色使いやデザインが、日本にはない明るさ、可愛いらしさ。種類がありすぎて選ぶのが難しいなか、これぞ、という4点を購入。
あっちの壁もこっちの棚もと品定めしているうちに、クロスステッチ未経験のNもほしくなったらしい。さんざん迷った挙句、「初心者がいきなりそんなハイレベルなのを選んで大丈夫か!?」というような、サイズが大きくて作業が細かそうなものを買っていた。さすが、妙なところで思いきりのいいNだ。選んだのはクリスマスのモチーフ、買ったのは6月。半年かけて仕上げようなんて言っていたが、結局12月に入っても完成しないどころか、ひと針も刺さないままクリスマスが過ぎたことを私は知っている。このおおらかさ(?)もNらしいわ。次のクリスマスまでに完成することを、陰ながら応援してやまない。
以下、パサージュのお店のいろいろ。
チョコレートとビスケットのお店
マカロンのお店
ドールハウスのお店
このあたりで、外は雨が降り出した。雨宿りもかねてティータイム。ラデュレに行ってさえ甘いものを食べていない私たち、パリのカフェでケーキを食べないでどうするんだ!というわけで、これもパサージュの中にある「Le Valentin」(ル・ヴァロンタン)へ。
洋酒をたっぷりきかせたサバラン。美味! Nはモンブラン。
この店で私は、誇り高きフランス人による洗礼を受けた。 これまでのところフランス語はレジでの「ボンジュール」「メルシー」しか発していなかったが、せっかくだからもっとパリっ子に歩み寄ろう!というチャレンジ精神を発揮し、フランス語で「お会計をお願いします」と言ってみたのである。曖昧に恥ずかしそうに言ったんじゃ伝わるものも伝わらなかろうと思い、お店のお姉さんの目をまっすぐに見て、発音はまったくわからないながらもハッキリと「L'addition,s'il vous plait(ラディシオン・スィル・ヴ・プレ)」と。
それなのにお姉さんときたら、「何か言ったみたいだけど聞こえなかったわ」というような顔をしてあっちへ行ってしまうではないか。ちょっとちょっと、いま絶対聞こえてたよね? ばっちり目が合ってたよね? どう考えてもお会計をお願いするタイミングでしょ、本当はわかってるよね? 私の発した一世一代の「シルブプレ」は行き先を失ったまま宙に消えてしまったのだった。
このあと、少し雨がおさまったかなという頃合いをみはからって店を出るも、むしろ雨脚は強まるばかりでスコールのようなさわぎに。ロンドンで買った雨用パンプスはすでに中までずぶ濡れ、ラファイエットやらプランタンやらデパートで買い物がてら雨をやり過ごしつつ、やっと雨のあがった街並みをまたてくてくと歩いて昨日と同じホテルに戻ったのだった。Nが地図を見ながら計算したところ、この一日で歩いた距離はなんと12kmだった。12km!
夕暮れのセーヌ川に遊覧船