同僚Mと仕事帰りに立ち寄ったいつものお店。すでにカウンターは混み合っていて、座れる場所を探してちょっときょろきょろしていたら、一番奥にいた先客の老紳士が微笑みかけてきて、隣の空席を指さしながら「よろしかったら隣にどうぞ」と。
「ありがとうございます」と笑顔で受けて隣に並ぶ。Mと、私と、紳士と、しばし3人で飲み交わしながら談笑。
そのうちに紳士が、彼のおすすめだというメニューを「召し上がったことがありますか」とたずねてきて、「食べたことありません」って答えたら、カウンターの奥にいる主人に向かって、「こちらのお嬢さんがたに、私から」と何やらオーダーを始めるではないか。
わあああ、なんというお嬢さん扱い!紳士からこんなふうにごちそうされる流れ、なかなかないよ!すっかり嬉しくなったMと私、はしゃぐ気持ちを抑えきれず。
これってあれだよね、よくドラマや映画であるような、ウェイターからグラスがスッと差し出されて(もしくはカウンターをグラスがスッとすべってきて)、「あちらのお客様から」とか言われて、そちらに目を向けると紳士がぱちん!ってウィンクなぞ飛ばしてくるような、そういうやつだよね!
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まあ実際のところは、そこはレストランでもバーでもホテルのラウンジでもなく、居酒屋だったわけですが。Mと私が愛してやまない「金の字」のカウンターの隅っこ、隣の紳士(っていうかおじちゃん)がおごってくれたのはカクテルでもシャンパンでもなく、手羽先と鶏ネック。いやあ、手羽先おいしかった。
これは、おじちゃんイチオシの「とりかわ」。
なんだかんだで我々3人は2時間近くも話し込んでしまった。先におじちゃんが立ち上がって「そろそろ眠いので失礼します」とお帰りになり、残ったMと私とはシイタケやじゃがいもをパクパク食べながら「金の字さいこう!!」と更けていく夜を楽しんだのだった。
常連だというあのおじちゃんに、そのうちまた会えそうな予感。話し方やたたずまいに不思議に品があって、惹きつけられる人だった。途中から私たちは彼のことを勝手に「頭取」と呼んでいたのだが、何かそういうオーラがあったのだよね、確かに。