晴れた休日、JR青春18きっぷの利用期間、桜の季節。こんだけの条件がそろってるのに列車旅行に出ずにいられるか!
ということで、西へ西へと向かいたい気分にまかせ、万葉の都の奈良を目指すべしと奈良市のホテルをぽちっと予約。そのあとJRの窓口で青春18きっぷを買い求めたところ、駅員はにこやかに「販売は終了しています」。おいおい、もう奈良のホテルを予約しちゃったよ! しかし鈍行に乗るのが目的なので、新幹線の切符を買う気は1ミリもなし。おとなしく奈良行きの乗車券を購入した。18きっぷ一回分より2.5倍高かったが、ほかに選択肢はございやせん。ちなみに静岡から奈良までは鈍行を乗り継いで6時間。奈良、すごく近いな!と思った。
そういうわけで、桜満開の奈良に到着。奈良市内をうろうろした後、関西の友人と合流して吉野山を散策する。ソメイヨシノは今が満開。青空に、水辺に、寺社の屋根に壁に、それはよく映えていた。
吉野山を埋め尽くすヤマザクラは、やっと二分咲きというところ。それでもつぼみがふくらんで、山全体がほんのりピンク色に染まり始めていた。
吉野山にて、花よりなんとか。
初めて訪れる吉野はとてもいいところだった。花も、山も、気持ちがよい。
吉野を含め、奈良は総じて、同じ古都である京都に比べて雰囲気がのびやかでゆったりしているなあと思った。そういえば和歌なんかも、時代が下った平安朝の歌よりも、万葉の歌の方がおおらかで雄大だし。天香久山(あめのかぐやま)とか畝傍山(うねびやま)とか、万葉歌に詠まれた地名がたくさんあったことにも興奮した。1300年の昔にこの場所で歌が詠まれたこと、それが今も伝えられていることのロマンといったら。
春の陽気と桜の花に誘われたのか、妄想活動もいつも以上にヒートアップ。一緒に行った友人も相当な妄想女子なのだが、なんかもうヤバかったよね私たち。カップルだけが落ちる落とし穴の話とか、マスクをめぐる桃色の妄想のこととか、さすがに恥を知れ!って感じの内容で、ここにはとても書き記せない。めくるめく妄想トークは東大寺の境内で繰り広げられたのだが、そのうちに破廉恥ぶりを見かねた大仏が遂に怒って立ち上がり、大仏殿の屋根を突き破って我々に平手打ちを喰らわせるんじゃないかという新たな妄想にとらわれはじめ、きゃあきゃあ言ってました、うひゃひゃひゃ。
そんなこんなで日は暮れてゆき……
夜は大阪に移動し、なんばにてお好み焼き&ネギ焼き&焼きそばをもりもりと食べ、グリコのでかい看板を眺め、別れの時間まではカラオケに行って思い思いに歌い、トリは森山直太郎の「さくら」を合唱して春の日を美しく締めたのであった。二人のバッグには奈良漬がどっさり入っており、行く先々で酒かすの香りをまき散らしていたことも付記しておく。帰りはなんだかやけくそになって夜行バスに乗った。18きっぷどころか、鈍行列車旅という目的すら忘れてるよ。
奈良、楽しかったなあ。時間があったら行きたい場所がまだまだあった。自分へのおみやげにはシカ手ぬぐい。ものすごく可愛い。