旅と日常のあいだ

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有限の言葉で無限の刺激を。川上未映子のエッセイ『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』に浸る

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川上未映子のエッセイ、『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』(講談社文庫)を読む。

これは何でしょう、圧倒的に圧倒的、久しぶりに凄いものを読んでしまったなあという興奮。独特な視点と感覚、読点で延々つながれたうねるような長い文章が、いやあ癖になるったら。まずタイトルからして素晴らしいよね。本人が超絶美人っていうところもよくて(帯の女性が川上さん)、好きすぎるあまり「川上未映子」でグーグル画像検索とかしちゃって美人画像をコレクションしてしまう始末。 

そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります (講談社文庫)

そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります (講談社文庫)

 

その川上さんが、先日NHKの「トップランナー」にゲスト出演していた。いちばん印象に残ったのが、「普通じゃない言葉の組み合わせに興奮する」と語るくだり。

これを聞いた時、歌人の穂村弘のことを思い出した。穂村さんは以前対談で、どうして言葉が出てくるのかという問いに対して「なにか特殊な組み合わせで、かつそれまでなかった意味をもつようなものを探し続け」ると言っている。実際、穂村さんの短歌にはハッとするような(普通じゃないような)言葉の組み合わせが出てきて、その刺激の気持ちよさがたまらない。本来だったら隣り合うはずのない言葉が隣り合うことへの興奮、っていうのは確かにあると思う。その正体というか、そこに気持ちよさを感じる個人差っていうのは一体どこからきてるのかわかんないんだけど。

そういう観点から、穂村さんの短歌で好きなもの。

  巻き上げよ、この素晴らしきスパゲティ (キャバクラ嬢の休日風)を

  ラケットで蝶を打ったの、手応えがぜんぜんなくて、めまいがしたわ

 ちなみに川上さんの近著のタイトルは『世界クッキー』。穂村さんのこれまでのエッセイのタイトルには『現実入門』や『世界音痴』があって、言葉を選びとるときの動機に似たようなものを感じてしまう。この二人で対談とかやってくれないかな。言葉の連なりについて、奇跡的な一節の可能性について、ねちねちと語ったらすごい面白いと思うんだけど。

世界クッキー (文春文庫)

世界クッキー (文春文庫)

 
現実入門―ほんとにみんなこんなことを? (光文社文庫)

現実入門―ほんとにみんなこんなことを? (光文社文庫)

 

 ▼と書いた翌年、実際に川上さんと穂村さんの公開対談が行われたので聴きに行った!

tokotoko.hatenablog.jp