『人生問題集』を読みふける。精神科医・春日武彦氏と歌人・穂村弘氏の対談集だ。生きることに不器用で、世間と対峙するための現実感が希薄で、そのために生じる居心地の悪さを言葉の力で解消できないかと試み続けている二人が、「友情」「救い」「孤独」「愛」などなどについて語る。その思考と言語表現は、感覚的でもあり論理的でもあり。ものすごく面白くて刺激的。
それから、私的にグッと迫る名フレーズがあちこちに散りばめられていて、興奮した。
「喘息持ちだから、時々席を外して薬を吸引しに行くんだけど、何だか損しているなと思いつつ、これこそ選ばれしものの証し、と自分を納得させてた」
「世間一般のイメージから見れば、石田衣良のほうが気取ってる人でしょ?(中略)石田衣良に完膚なきまでにやり込められるなんて、夢にも思わなかった」
「見慣れた漢字が急に漢字に見えなくなるような時に、この世界はやっぱり幻想で、漢字も人間の生も自明性のイリュージョンとして辛うじて存在しているに過ぎないと気づかされる」
「どうして現在はとりとめがなくて、昔のものはどこまでも甘美なんだろう。古い書体とか昔の看護婦さんの帽子とか南洋帰りの叔父さんのパイプとか・・・・・・」
石田衣良にやり込められる穂村さん! 南洋帰りの叔父さんのパイプ! こりゃあもう、たまりませぬ。