大好きな歌人のひとりに穂村弘さんという人がいる。この人の手にかかると、言葉がきらきら光りだすような気がする。言葉の選びかたや並べかたに、陶然としてしまう。なかでも歌集『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』でのキレっぷりはすごい。まみという少女から届く無数のファンレターに書かれていた短歌を穂村さんが抜き書きしたという体裁の、超刺激的な歌集だ。
いくつか例を引くと、
「殺虫剤ばんばん浴びて死んだから魂の引き取り手がないの」
巻き上げよ、この素晴らしきスパゲティ(キャバクラ嬢の休日風)を
氷メロンの山よりふいと顔あげて、ここらで舌をみせたげようか?
わがままで可愛くて、挑発的で、過剰な自意識の塊で。そんな少女の影が見えてきませんか? なかでも好きな歌がこれ。私が考える「理想の少女性」みたいなものが、ここにはあるのです。
なんという無責任なまみなんだろう この世のすべてが愛しいなんて