旅と日常のあいだ

石川県発、近場の寄り道から海外旅行まで。見たもの、食べたもの、面白いことの共有。


読書

科学と技術と友情は強い!『プロジェクト・ヘイル・メアリー』感想

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上 作者:アンディ ウィアー 早川書房 Amazon アンディー・ウィアー著『プロジェクト・ヘイル・メアリー』読了。 文句のつけようがなく、素晴らしく面白かった。文字どおりの意味で「宇宙規模」な一大プロジェクトの、スケー…

推理小説の前提を揺るがす『虚無への供物』中井英夫

新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫) 作者:中井英夫 講談社 Amazon とても独特で型破りなスタイルの推理小説だった。 氷沼家で起こる密室の連続死に対して、登場人物たちが推理合戦を繰り広げる。全編をとおして、ひたすら互いに推理の披露。その内容に…

戦国×ミステリーがばっちりハマる面白さ。米澤穂信『黒牢城』

米澤穂信さんの『黒牢城』読了。ここ数ヶ月に読んだ小説でいちばん好き。 ミステリー各賞を総ナメしていたのでミステリーなんだなということはわかってたけど、歴史小説かつミステリーってどういうことなのか想像もつかず。前知識なしで読み始めたら、これが…

ひらみぱんのカヌレ、『十角館の殺人』、踏切の世界

|ひらみぱんのカヌレ ののいちカレード(図書館)に行ったついでに、併設のパンコーナーをのぞき、ひらみぱんのカヌレを買った。表面はがっちり固めで、ナイフを「入れる」というより「突き刺す」くらいの容赦なきガリガリぐあい。中はむっちりムニムニで、…

ミスドのヴィタメールドーナツで一番おいしいのはショコラノワゼットだと思う

ミスドブーム到来中で、この5日間で3回購入した。ヴィタメールのチョコドーナツがおいしすぎてどうしようもない。先日の健康診断で「中性脂肪に気をつけなさい」と指摘されて危機感を覚えたはずなのに、心の底から確かに反省したような気がするのに、ドー…

文学への愛と尊敬がほとばしる。『ものがたりの賊』真藤順丈

『ものがたりの賊(やから)』真藤順丈を読んだ。 ときは大正時代、関東大震災の被害と軍部台頭の混乱のなか、富士の樹海で生まれた悪鬼が正体不明の感染病をまきちらしながら東京に侵略。帝都を、日本を守るため、時を超えて結集した人物たちが立ち向かう!…

祝・懸賞当選、そして図書館POPコンテストの結果発表

秋に加賀しずく(石川県産の梨)キャンペーンに応募したら、忘れた頃にメールがきて「おめでとうございます、当選しました。つきましては3つのうちから賞品を選んでください」と。トートバッグ(売るほど持ってる)、お皿(ペアならうれしいけど1枚だけか…

記憶力はまずいけど、趣味はブレてなかった

職場の昼休みに本を読むことを何よりの楽しみにしている私だが、今日はショックなことがあった。急いでパンを食べ終え、さあ読むぞと図書館で借りた小説を開く。表紙をめくったところに見開きのイラスト地図があり、それはどうやら物語内の世界地図らしいの…

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』に自分の育児を考える

話題作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読んだ。 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(新潮文庫) 作者:ブレイディみかこ 新潮社 Amazon イギリス在住ライターによるエッセイ。主役はイギリスの「元底辺中学校」に通う息子で、そ…

朝井リョウ『正欲』 想像の外にあるものを「認める」ことはできるのか

「自分が想像できる"多様性"だけ礼賛して、秩序整えた気になって、そりゃ気持ちいいよな」これは共感を呼ぶ傑作か? 目を背けたくなる問題作か? 正欲 作者:朝井リョウ 新潮社 Amazon 読み終えたあとしばらく、頭の中に渦巻く感情を言葉にまとめられず。人のレ…

記憶と違うドーナツ、ただただ楽しい森見登美彦『四畳半タイムマシンブルース』

コロナワクチン2回目接種後のだるさはすっかり消えた。翌日と翌々日午前中は全身が使いものにならない感じだったけど、その後はぶり返すこともなく。どこも痛くないというのは、それだけで素晴らしくありがたいことよのう。 ミスドのオールドファッションが…

村上春樹が気になるこの頃。「多崎つくる」と「騎士団長殺し」の考察本ほか。

夏の初めごろから私の中で村上春樹ブーム。長編『騎士団長殺し』を読み終えたあと、長編『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』、自伝的エッセイ『職業としての小説家』を読んだ。 『騎士団長殺し』をおもしろく読んだという感想は前に書いたとおり。…

身近な人が日常から逸脱してしまったら。『水たまりで息をする』感想

高瀬隼子『水たまりで息をする』を読んだ。 水たまりで息をする (集英社文芸単行本) 作者:高瀬隼子 集英社 Amazon ある日、夫が風呂に入らなくなった。夫は、水道水がカルキくさいといい入浴を拒み続ける。妻はペットボトルの水で体を洗うように言うが、夫は…

土九の五郎島金時たいやき。毒吐き大盛りの「文学賞メッタ斬り!」がおもしろすぎ。

久しぶりに、野々市は土九(つちく)のたいやきを買う。暑い間はご無沙汰していたけど、やっと涼しくなってきて焼きたてが恋しい季節。 9・10月の限定味は五郎島金時あん。一年ぶりにいただきます。ひとくちかじると記憶以上においしくて震えた。ねっとり…

ケーキが食べたくなる小説『西洋菓子店プティ・フール』

栗のお菓子がならぶシーズン到来。バームロールのマロンクリーム味、キットカットのモンブラン味……栗好きにはうれしい季節。キットカットのパッケージかわいいなあ。おいしいモンブランを求めてケーキ屋さんに行きたくなる。 * * * いま読んでいる千早茜…

気球飛行、氷上に不時着、地図にない島に上陸後、全員死亡。『北極探検隊の謎を追って』感想

お盆の時期。私と夫と子ども(保育園)の休みは少しずつずれていて、二人は休みなのに私だけ出勤とか、反対に私だけが休みの日もある。まとまった夏休みという感じはなく、今日が何曜日なのかの感覚がだんだん怪しくなってきている。 最近読んだ本。『北極探…

性に奔放な生き物たち。『南極探検とペンギン』がおもしろい

『南極探検とペンギン』ロイド・スペンサー・デイヴィス著 「本の雑誌」および日経新聞書評欄の紹介にひかれて手に取った。数年前から南極および北極探検ものが好きでときどき読んでいるのでおもしろかった。歴史や知識がつながって「あ~、あれね!」ってな…

評判はいろいろだけど私は好き。村上春樹『騎士団長殺し』

村上春樹『騎士団長殺し』を読んだ。上下巻で1000ページ超えの長編。とてもおもしろかった。読む前に想像していたのよりずっと、意外なほどおもしろかった。 村上春樹の小説を読むのはたぶん『海辺のカフカ』以来。数えてみたら18年ぶり(そんなに経つ…

『爆弾魔 続・新アラビア夜話』小説3冊分くらいのエピソードと読みごたえ

『爆弾魔 続・新アラビア夜話』 R・L・スティーヴンソン、ファニー・スティーヴンソン 「本の雑誌」の新刊紹介がめっちゃおもしろそうだったので図書館で借りてきた。タイトルのとおり前作があっての続編なのだけど、作者による前書きで書かれているように前…

伊坂幸太郎『逆ソクラテス』さくさく読んだけど、さらなる爽快感がほしかった

本日6月16日は「和菓子の日」だそうな。さっき知った。和菓子をつまみながらこのブログを書いていますと言いたいところだけど、いまシュークリームを食べている。美味。このあとリングフィットアドベンチャーをするから、その分のカロリーの前借り(?)…

コロナ禍で心の余裕をなくしていく世界。桜庭一樹『東京ディストピア日記』

桜庭一樹『東京ディストピア日記』を読む。 桜庭さんが私的に書いていた日記を加筆編集して本の体裁にしたもの。桜庭さんが経験して感じた、コロナ禍の今のリアルが書かれている。おもしろいというよりは、淡々とした記録集のよう。読みながら、自分自身の記…

家族の情と、お菓子がつなぐ縁。西條奈加『まるまるの毬』

西條奈加さんの『まるまるの毬(いが)』、続編の『亥子(いのこ)ころころ』 を読んだ。心にあたたかい気持ちが静かに灯るような、いい読後感。 ちょっと前に読んだ同じ作者の『心淋し川』もそうだったけど、誰もがなにかしらの痛みや秘密を抱えていて、ど…

人生はしんどいけど、ささやかな希望は必ずある。西條奈加『心淋し川』

直木賞受賞作、西條奈加さんの『心淋し川』を読んだ。タイトルの読み方は「うらさびしがわ」。漢字変換に手間どる。 江戸のとある小さな町、よどんだ川べりにひしめく貧乏長屋に暮らす人々を描いた6つの短編の連作集。1話ずつ登場人物が異なり、趣も展開も…

桜もちパンケーキとかけて、最近の読書傾向ととく

セブンイレブンで売ってる「桜もち風パンケーキ」がお気に入り。この1ヶ月で4回買ったけどまだ飽きてない。パンケーキで桜あんとホイップクリームをはさんであって、ほんのりした桜葉の香りと塩気が、あんことクリームの甘さをちょうどよく引き立てていて…

柚木麻子『本屋さんのダイアナ』

柚木麻子さん『本屋さんのダイアナ』を読んだ。 ダイアナと彩子、二人の少女の成長と友情。二人とも読書が大好きで、物語から力を得たり生きる指針にしている。赤毛のアンが主要なモチーフのひとつになっていて、赤毛のアンが好きな私は随所で「わかる~!」…

書くことは、記憶をつなぐこと。乗代雄介『旅する練習』感想

乗代雄介さんの『旅する練習』を読んだ。とてもよかった。 小説家の叔父と、女子サッカーの名門中学に進学が決まった姪・亜美の物語。コロナ禍で小学校が休みになった春、ふたりは我孫子から鹿島まで数日間の徒歩旅行に出かける。叔父は訪れる先の風景を描写…

たいやきからドーナツへの一時的な浮気

図書館の雑誌コーナーを見ていたら、ダ・ヴィンチ最新号(2021年2月号)がセーラームーン特集だった。表紙のセーラームーンがかわいくて目が吸い寄せられる。セーラームーン、ストーリーや結末にはそれほど関心も思い入れもないのだけど(単行本は途中で買う…

青山七恵『みがわり』感想。文章に引き込まれ、虚構世界に飲み込まれる。

文句なしにおもしろかった。帯に「予測不能のラストに向かって疾走」とあるけれどまったくそのとおり。二転三転の展開にとてつもない衝撃を受け、呆然。同時に、物語に翻弄されることの幸福を感じた。 新人作家の律は、ファンを名乗る女性から亡き姉の伝記を…

2020年の読書記録まとめと、特に好きな小説3選

2020年に読んだ本の記録を時系列で。★はよかったもの、★★はその中でも特によかったもの。印象深い三冊をあげるならば、『ザリガニの鳴くところ』『なめらかな世界と、その敵』『わたしの美しい庭』かな。 探検家とペネロペちゃん(角幡唯介) カザアナ(森絵…

年末は三浦しをんまつり。『政と源』『のっけから失礼します』

三浦しをんさんの『政と源』を読んだ。国政と源二郎、それぞれ70歳を過ぎた幼馴染ふたりの、友情と人情味あふれる日常の物語。全体的にドタバタしてコミカルな印象で、ものすごーく軽く、さらっと読み終わった。 政と源 (集英社オレンジ文庫) 作者:三浦 しを…